◆南三陸モアイ化計画のあゆみ

「南三陸モアイ化計画」のはじまり

  • きっかけは「南三陸町のいいところを全国の方々に伝えたい!」
     情報ビジネス科の「課題研究」という授業の中で,マーケティングを選択したメンバー8人で「志高マーケティンググループ(Shiko Marketing Group)」を平成22年に立ち上げました。志津川高校は,南三陸町にある唯一の高校であることや将来は地元のために何かしたいと考える生徒が多いこともあり,少しでも町の活性化に協力したいという生徒の想いからはじまりました。


  • まずは「南三陸町のいいところを調査」
     南三陸町を全国にPRするために,住んでいる町について調査をしました。調査を通して南三陸町は,水産資源が豊富で,観光スポットがたくさんある,自然あふれる町であることに改めて気づかされました。
     代表的な観光資源としては,戸倉地区では,荒波がしぶきをあげる姿がダイナミックな「神割崎」やすぐそばで海を一望できる「神割崎キャンプ場」,志津川地区では,穏やかな波と白い砂浜が有名で,日本海水浴場88選に選ばれたこともある「サンオーレ袖浜」,歌津地区ではウタツザウルスという名前がつけられた国指定の天然記念物である「魚竜化石」があります。また,特産品として全国的にもタコが有名で,秋から冬にかけて,アワビ等を食べて育ったマダコや水だこを堪能でき,さらに銀鮭についても全国でも有名なブランド品となっており,多くのマスコミにも取り上げられています。また,各飲食店において,ホタテやうに,いくら,牡蠣,アワビなどを使った「キラキラ丼」が発売され,新鮮な海の幸を堪能することができます。


  • そして「モアイの町・南三陸町」を全国へ発信
     調査をしていく中で,町内には多くのモアイが点在していることを改めて実感しました。町内の人にとっては当たり前のことでしたが,町外の人の多くが知らないことを知り,南三陸町のPRには,モアイが必要不可欠であると考え,「南三陸モアイ化計画」が動き出しました。


「南三陸町とモアイ」の関係

  • 南三陸町にあるモアイ
     震災前の南三陸町では,町の様々な場所でモアイを見かけることができました。松原公園や戸倉さわやか公園のモアイ像,入谷舘下橋の柱,志津川駅前のモニュメントがあっただけでなく,マンホールのふたやモアイ岩など町民の暮らしの中にモアイが溶け込んでいました。



  • 南三陸町とモアイの歴史
     南三陸町は,1960年に発生したチリ地震津波で大きな被害を受けました。復興を遂げた両国の友好のしるしとして,1990年(平成2年)に当時の駐日チリ共和国大使が来町し,町に「友好のメッセージ」を贈りました。このことをきっかけに交流が始まり,1991年(平成3年)に復興と友好,そして防災のシンボルとして松原公園にモアイ像が設置されました。このモアイ像は,イースター島のモアイ像と同じ種類の石でできており,チリ共和国の現地の石工が,現地の石を使用して,製作したそうです。
     2010年(平成22年)にチリ地震津波発生から丁度50年が経過しましたが,正にその節目の年に,再びチリ地震津波が南三陸町を襲いました。まさに,「災害は忘れたころにやってくる」ことを痛感する出来事でした。



震災前の「南三陸モアイ化計画」の取り組み

  • 南三陸モアイ化計画とは
     南三陸町の良いところを調査する中で,「モアイを活用して町おこしをすればいいのではないだろうか」と一人の生徒からの提案に,他の生徒たちも町にとって良いことだろうと全員一致で決まりました。モアイといえば,多くの人が世界遺産であるイースター島にあるモアイ像を想い浮かべますが,南三陸町にもモアイ像があるということはあまり知られていないことから,そのことがむしろ人を呼ぶきっかけになるのではないかと考えました。何といっても憎めない風貌と神秘性は,PRキャラクターとしてうってつけであることから,モアイ像をモチーフにした商品などを製作・販売することで地域活性化を目指し,これを「南三陸モアイ化計画」と名付け活動を始めました。
     具体的には,情報ビジネス科の課題研究の授業を通して南三陸町の活性化と町民の防災に対する意識の高揚,さらにチリ共和国との友好を深めることを目的に,町や商店街と協力してモアイに関する商品を開発・販売し「モアイの町・南三陸町」として,地域内外に発信する活動です。


  • モアイキャラクター製作
     「人を集めるためには面白い活動をすることが大切!」生徒たちは,モアイ像をキャラクター化しそれを人気者にすることで注目を集めれば町のPRにつながると考え,南三陸町のご当地キャラクター「モアイキャラクター」を製作しました。生徒たちが製作したモアイキャラクターは,現在200種類以上になっています。



  • モアイ商品の開発
     「モアイの町・南三陸町」を打ち出すためにはキャラクター製作だけでは,インパクトが足りないと考え,モアイ商品を開発して販売することを考えました。木片にモアイキャラクターを彫って型を作り,クッキー生地を型に押し付け焼き上げた「モアイクッキー」や携帯電話用の「モアイストラップ」,「オリジナルモアイステッカー」などを商品化しました。



  • 大漁市への参加
     モアイキャラクター製作やモアイ商品を開発する中で地域内外に発信するため,平成22年11月14日に行われた「大漁市」に参加し宣伝活動を行いました。南三陸モアイ化計画を多くの方々に知ってもらえるようスタンプラリーを企画し,景品としてモアイストラップを配布したり,アンケート調査のお礼としてオリジナルモアイステッカーをプレゼントするなどの活動を行いました。この活動は当時,「モアイで地域おこし」,「モアイ発信計画」などという見出しで多くのマスコミに取り上げられました。



  • モアイカレンダーの配布
     南三陸モアイ化計画を町全体に広めるためには「大漁市」での宣伝活動だけでは足りないと考え,本校のジュニアインターンシップ(就業体験)でお世話になった事業所などを中心に,南三陸町で働くカメラマン,コック,看護師,漁師,鮮魚店などで働く人をイメージしたモアイキャラクターと月のイベントに合わせて,たこ揚げや運動会を楽しむモアイキャラクターを生徒が作り,そのキャラクターを使ったカレンダーを作製し,配布しました。この活動も当時,多くのマスコミに取り上げられました。モアイカレンダーは現在も毎年製作し,町内各所に配布しています。



  • 町民向けプレゼンテーションの実施
     平成23年2月20日に町内の公民館を会場に,本校の取組を多くの町民の方々に知っていただくとともに,取組への協力が得られるよう今年度の取組について発表を行いました。発表では,町内にあるモアイ像を有効活用することで,町の活性化を図ることができるのではないかというテーマで,事前に広告を作成し商工会や観光協会等に配布しました。発表には多くの町民の方々が参加し,励ましの言葉をいただいたことで今後の活動に手応えを感じることができました。



  • 次年度への引き継ぎ
     平成22年度にはじまった「南三陸モアイ化計画」は,3年生8人による活動でしたが,この活動を2年生が次年度引き継ぐことになりました。平成23年4月からの取組としては,新たなモアイ商品の発売とモアイキャラクターの名前募集,モアイ弁当コンテストやモアイマップの作成などを企画していました。


震災後の「南三陸モアイ化計画」の取り組み

  • 東日本大震災の発生
     平成23年3月11日に東日本大震災が発生し,南三陸町は一瞬にして壊滅状態となってしまい,この取組を継続することは難しいと考えられました。



  • 震災を乗り越えて
     町民の方々などから「こんな時だからこそ継続して頑張ってください。」という励ましの言葉をいただきました。そこで,生徒たちはこの大変な状況の中で何ができるかについて考えた結果,「小さなことでもいいのでできることから始めよう」ということになりました。震災後の最初の取組は,授業が再開した5月に復興支援のために県外から応援に来ていた警察官に対し,「モアイ復興プレート」を贈呈することでした。支援していただいている警察官の方々に感謝と応援の気持ちを込めて作成し,警察車両に貼っていただきました。「がんばろう!南三陸」とプレートに書かれた文字は町民のみなさんに元気を出してもらいたいという想いもありました。



  • モアイ像の発見
     震災による津波は,松原公園内に設置してあった防災のシンボルであるモアイ像をいとも簡単に押し流してしまいました。後日,モアイ像は瓦礫の中から頭部と胴体がバラバラの状態で発見されました。本校の生徒たちがモアイ像の救出を町に要望したところ,同年11月5日に町と三菱商事の全面的な協力により頭部を本校の生徒昇降口付近に移設していただくことができました。モアイ像の頭部は現在も毎日生徒の登下校を見守ってくれています。



  • チリ共和国からのメッセージ
     平成23年11月17日に日智経済委員会チリ側アンドラッカ会長が本校を訪れた際に本校の南三陸モアイ化計画に大変感激し,南三陸町と本校への支援と協力をしたいと述べられました。その後,日本とチリの絆を深めるプロジェクト「希望プロジェクト」を進めるために,エスペランサ(希望)委員会が立ち上げられ,南三陸町へのモアイ像の寄贈と本校生徒のチリ共和国への短期留学招待へとつながることになりました。


  • チリ共和国ピニェラ大統領の来校
     平成24年3月30日に,チリ共和国のピニェラ大統領が本校に来校し,南三陸町に哀悼の意を述べられるとともに,チリのイースター島の石を使って新しいモアイ像を製作し,南三陸町に寄贈する意向を表明されました。



  • 町民バスの復活に向けて
     震災前,南三陸町内を「いしゃりくん」という名の町民バスが運行され,生徒たちも部活動などで利用させていただいていましたが,そのバスは震災の津波によって流されてしまいました。そこで,高校生の力でバスを復活させようと,オリジナルのモアイ缶バッヂとストラップを製作・販売し,その収益金で新しいバスを購入し町に寄贈する計画を立てました。実際に販売を始めたのは,町内に待望の仮設商店街(さんさん商店街)がオープンした平成24年2月25日でした。当日はあいにくの大雪でしたが多くのお客さんが来場し,オリジナルの缶バッヂとストラップを販売することができました。



  • 焼き菓子販売を通して
     震災後,ボランティアのために来町していた長崎商業高校商業クラブの先生が本校の取組を知り,本校のために手伝いたいという申し出をいただきました。長崎商業高校商業クラブでは,「くじラブ焼き」というクジラの形をした焼き菓子を販売しており,それと同じようなものをモアイキャラクターで行ってはどうかという提案から鋳型を寄贈してくださいました。平成24年5月27日に町内で開催された「福興市」では,長崎商業高校商業クラブの生徒2名と顧問の先生1名が来町し,本校の生徒と共同で「モアイ焼き」を販売しました。当日は,日差しも強く,焼き菓子を食べるには少々暑い日となりましたが,多くのお客さんが行列を作り,調理が追いつかないほどの盛況ぶりでした。



  • 「みなさんモアイサポーターズ」の発足
     平成24年9月に南三陸町の仮設商店街の店主の皆さんを中心とした有志団体「みなさんモアイサポーターズ(みなサポ)」が発足しました。みなサポでは,本校の取組を全面的にバックアップするために販売・PR活動などへの協力をしていただいています。同年11月には,本校の取組を広く知ってもらうために「モアイ新聞」を発行し,町内の全世帯に配布していただきました。


  • 「モアイサークル」の結成
     テレビや新聞の影響もあってモアイ缶バッヂの売れ行きも好調となり,志高マーケティンググループのメンバーだけでは製造が追いつかなくなってきたため,モアイ缶バッヂの売上金により町にバスを贈呈する計画を全校生徒に訴えたところ,多くの生徒が賛同・協力してくれることになりました。平成24年10月に「モアイサークル」が結成され,町民バス寄贈の計画が情報ビジネス科にとどまらず,学校全体での取組みとして発展することになりました。モアイサークルは,現在も情報ビジネス科の課題研究の南三陸モアイ化計画班を中心に活動が続けられています。


  • モアイ(=未来に生きる)の到着
     イースター島で造られた新しいモアイ像は,約1万5000キロの海を渡って平成25年の3月に東京丸ビルでの除幕式,同年5月にグランフロント大阪での点灯式を終えた後,同年5月25日晴れて南三陸町に到着し開眼式が執り行われました。
     サンゴと黒曜石でできた眼が入れられるモアイ像は世界でも珍しく,眼を入れたモアイには「マナ(霊力)」が宿るといわれており,像の台座には「このモアイ像は,人類史上まれにみる悲劇によって亡くなられた方々に対する全チリ国民の親愛,友情,敬意,そして,深い弔意を表して,制作されたものです」と刻まれ「未来に生きる南三陸町」を見守っています。モアイ像は,たくさんの人が集まるさんさん商店街に設置され,南三陸町の新しい観光スポットとして,休日になると県内外から多くの観光客が訪れ,モアイ像と一緒に記念撮影を行っている姿が多くみられます。



  • 南三陸町にバス購入資金を寄付
     平成23年度から町民バスを寄贈するために,モアイ缶バッヂ・ストラップなどの販売活動に取り組んだ結果,その収益金の合計額が450万円を超え,平成25年11月21日に町へ購入資金として寄付しました。小さなことでも継続して取組んできたことが成果になり,生徒たちもやりがいを感じているようでした。



  • 2回目の町へのバス購入資金寄付
     平成27年6月25日に生徒たちが製作・販売した商品の収益金200万円を町に寄付しました。寄付金の総額が650万円となり,ついに念願の町民バス購入の目途が立ちました。



  • 「南三陸思い出かるた」が完成
     南三陸想い出かるたは,震災で被災した町の風景などを題材に,被災しても変わらないふるさとの魅力を伝えることを目的に製作しました。南三陸町の伝統や特産品などをモチーフとして織り込んだオリジナルかるたは,平成23年から手作りで製作を開始し,毎年下級生に引き継がれながら平成27年に完成しました。同年12月,町内にある5つの小学校と老人介護施設に寄贈しました。



  • 町民バス「南三陸モアイバス」のデザイン完成
     平成28年7月,情報ビジネス科の課題研究の授業で新しい町民バスのデザインコンペを行い,3年1組の佐藤さんのデザイン案が採用されることになりました。



  • 町民バス「南三陸モアイバス」の贈呈式
     震災から5年と9ヶ月が経過し,卒業生や在校生をはじめ,全国から協力をいただいた方々の想いが沢山詰まったモアイバスが,平成28年12月20日に町に贈呈されました。



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